「恋とか 愛とか やさしさなら」
一穂ミチさんはとてもとても好きな作家さんです。新刊出ると必ずチェックします。
過去のものも全部制覇したいと思う作家さんの一人です。
なかなか一気読みできていないこの頃でしたがこの本は一気読みしました。最初から最後までそわそわと先が気になり続けそのまま読み終わりました。
一穂ミチさんの作品で今までに読んだものは
- 「スモールワールズ」一気にファンになった作品。
- 「光のとこにいてね」一穂ミチさんにしか書けない表現や文章から放たれる威力がすごい。
- 「ツミデミック」短編集でも長編のような濃厚な作品。直木賞作。
- 「うたかたモザイク」短編集で一つ一つがこれ書いたの同じ人?って思うくらい色が違って宝物ボックスのよう。
今回で5作品目となります。
そして今回の「恋とか 愛とか やさしさなら」ですが、今回も文章から放たれる威力がすごいです。
〈 書籍の内容 〉
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が”出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。信じるとは、許すとは、愛するとは。
男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
引用元:小学館
著者新境地となる恋愛小説。
”プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。”
この一文、1回目いきなり衝撃で、え?どゆこと?となり理解ができなくて私は二度見しました(笑)
これからどうなるの?どうするのよ??と思いながら読み進め、読めば読むほど答えが見えなくなりました。自分の答えはあっち行ったり、こっち行ったり。
著者の一穂ミチさんもこのように言っています。
引用元:小学館
自分だったらどうするだろう?
答えの出ない問いかけを、
何度も何度も繰り返して書きました。
――一穂ミチ
何度もご自身に問いかけながら作り出されたこの作品は、たくさんの葛藤が手にとるように伝わりこちらも一緒に葛藤することになります。
そして、人間の細かい感情を巧みに表現されているので、その感情わかる!と、自然と登場人物に感情移入しやすいです。
この本を読んでいて、私は自分では気づかないような自分の細部に気づくことができました。
また、気付けていても言葉にするのは難しいと思うような感情を言葉にしてくれているので、そうかそう言いたかったのか・・と唸りながら読むことができます。
その場がリアルにイメージできてしまうという世界がそこにありました。芸術ですね。
最後まで怖くなるほど絵が浮かび新夏と啓久が知り合いのように感じました。
最後の一ページを読み終わりほっと一息。
内容は考えさせられ、正解が出せないものですが、そのモヤモヤがとても濃厚で豊かな読書タイムとなりました。